ビジュアルに北大路魯山人の人生と芸術の全体像を浮かび上がらせる評伝的作品集


ビジュアルに北大路魯山人の人生と芸術の全体像を浮かび上がらせる評伝的作品集

北大路魯山人というと、どんなことをイメージしますか?

やはり美食家であり、超一流の陶芸家というイメージが最初に思う浮かぶのではないでしょうか?

しかしながら、魯山人の一番の独自性は、専門的な教育を受けることなく、独学で様々の芸術分野で頂点を極めた芸術家であったということだと思います。陶芸だけでなく、書道、絵画、漆芸、篆刻などの分野で素晴らしい作品を数多く残しました。

魯山人は決して恵まれた人生を順風満帆に歩んだ訳ではなく、生い立ちは不遇そのものでした。里子に出されて、苦労しながら独学で芸術を追求したのです。

魯山人の数奇な人生については、自身が遺したエッセイや、魯山人に関する評論や評伝、数々の作品を収録した作品集など、たくさんの書物があります。

そんな中で本書は、端的に分かりやすく魯山人芸術の全体像を知ることができるという点で、ピカイチの存在です。優れた魯山人入門書と言えるでしょう。

美と食の天才 魯山人 ART BOX

絶妙なブックデザイン

本書の判型は、150x23x148mm というサイズで、A5判の長辺を短くしたような、おおむね正方形のかたちをしています。かなりコンパクトで持ち運びに便利なサイズです。

ハードカバーの新刊の書籍、単行本によく使われるのは、四六判(127x188mm)やB6判(127x182mm)、ビジネス書や専門書でよく使われるのは、A5判(148x210mm)。これらの判型と比較してみても、コンパクトであることが分かります。

ほぼ150mmの正方形というプロポーションも、ふんだんに写真が掲載された写真集の雰囲気を持っていて、気軽に手に取りたくなります。魯山人入門にふさわしい絶妙なデザインです。

評伝と作品のバランス

魯山人の評伝は、その人生におけるエピソードに事欠かなかったこともあって、かなりボリュームがある大部のものが多いのですが、本書は実にコンパクトです。テキストはそれほど多くはないものの、印象的なエピソードやストーリーが収録されていて、魯山人の人生をトレースしながら知ることができます。

そして、もう一つの重要な点は、作品集としての役割です。単なる評伝で終わらずに、魯山人芸術の魅力を、人生のイベントを乗り越えながら、次々を多様な芸術分野を極めてゆく魯山人の足跡を辿ることができます。評伝+作品という絶妙なバランスで全体が編まれているので、分かりやすく魯山人芸術の全体像を掴むことができるのです。

魯山人と親しかった筆者の生い立ち

本書が他の魯山人本と一線を画しているのは、筆者が魯山人と親しく関わってきた生い立ちがあるからでしょう。子供のころから「魯山人おじさん」を見てきた筆者の審美眼は、自然と磨かれてきたのだと思います。

現在は、東京渋谷にある近現代陶芸・工芸を専門とする老舗美術商「しぶや黒田陶苑」の代表で、魯山人作品をはじめとして陶芸作品、漆工芸などを幅広く扱っています。

本書の中では、数多くの魯山人作品が紹介されています、魯山人のエピソードや鑑賞のポイントが書かれていて、専門的な知識に裏打ちされた、作品に対する深い洞察力を感じさせる作品解説はとても読み応えがあります。

NHK特集ドラマ「魯山人のかまど」を観て

先日、NHKの特集ドラマ「魯山人のかまど」が放映されました。

晩年の魯山人のもとを、若手記者・ヨネ子が訪ねてきて、ヨネ子の眼を通して、吉田茂、イサム・ノグチ、ロックフェラー3世などとのエピソードが、ドラマとして展開するといった内容でした。

北大路魯山人に藤竜也、ヨネ子に古川琴音というキャスティングでしたが、俳優たちの演技が素晴らしくて、すっかり魯山人の世界に入り込んでしまいました。

ヨネ子は架空の人物だそうですが、実際にあったエピソートを軸に脚本が書かれていたようでした。もしかしたら、筆者もこうしたエピソードに何らかの形で関わったのではないかな、などと想像するのも楽しかったです。

ドラマの中で使われていた陶芸作品には、本物の魯山人作品もあったようで、その点も興味深かったです。やはり迫力がありますね。ちゃんと確認はできていませんが、私が見たところ、一部の作品は、本書に掲載されているものではないかと思いました。

NHK特集ドラマ「魯山人のかまど」キャスト・あらすじ【まとめ】

「知られざる魯山人」山田和 著

以前から魯山人には興味を持っていて、いろいろな魯山人に関する本を読んできました。そんな中で、自分として最も興味深く心に残った本をご紹介します。

知られざる魯山人

80人を超える関係者への徹底的な取材をもとに書かれた魯山人の一生について書かれたノンフィクションです。魯山人の真実の姿を理解する上で、とても素晴らしい本だと心から感動しました。2008年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した力作です。ご興味があれば、ぜひこちらもお読みください。

まとめ

北大路魯山人が没したのは1959年(昭和34年)。すでに没後66年が経過して、魯山人本人と親しく関わってきた人も少なくなってきています。そんな中で、魯山人を知る人による魯山人の本は貴重です。「日本の美と食の天才」と言われる魯山人について知りたければ、まず手に取ってみてはいかがでしょうか。


没後50年 自分の生き方を貫いた世界の板画家 棟方志功の自伝『板極道』

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