やきもの好きの知識とこだわり満載の良著!「よくわかる やきもの大事典」


やきもの好きの知識とこだわり満載の良著!「よくわかる やきもの大事典」

やきものの世界は裾野が広く、その全貌を理解するのはなかなか大変です。

その広範な世界を理解したい、そんなニーズに応えるコンセプトの本をご紹介します。

「歴史・特徴・選び方‥基礎知識から楽しみ方まで、この1冊ですべてがわかる!」

そんな意欲的な言葉が、カバーの袖に書かれています。

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編者について

本書には、いわゆる著者という形のクレジットがありません。

「やきもの愛好会 編」という形で、編者がクレジットされています。

巻末では、編者は次のように紹介されています。

やきもの愛好会
日本の陶磁器をこよなく愛する同好の士が集まり、各地の伝統的な産地や窯元の歴史を知り、現代の作品を日常の器として使うための情報交換と勉強をする会。

詳しくは分かりませんが、陶磁器を愛する人たちが集まって勉強している会のようです。その人たちの知見が纏められているのが本書ということなのでしょう。

そして制作スタッフの取材・原稿の欄には、以前も当ブログで著書をご紹介した仁木正格さんのお名前もあり、正しい知見に基づいた本だということが分かります。

【書評】『やきものの見方・楽しみ方』仁木 正格(主婦の友社)

本書の見方

冒頭の数ページに「本書の見方」ということで、丁寧な説明があります。

主に4つの切り口で、やきものが紹介されています。

見る|歴史  各産地の歴史を知ることにより、その特徴がより分かりやすくなります。

      ・そのやきものの成立の経緯、時代背景、栄枯盛衰
      ・時代ごとの特徴や様式
      ・具体的な年代と作品の特徴、写真、収蔵先など

知る|特徴  産地ごとに具体的な説明があり、その特徴がわかるようになっています。

      ・各様式などの特徴、収蔵先など

選ぶ|買う  現在入手できる各産地の特徴ある作品を多数紹介しています。
       選ぶポイントも紹介されています。

      ・具体的な作品となんと値段も!
       値段は本が刊行された2008年時点のあくまでも参考になりますが。。。

使う|盛付  盛付の参考例を紹介しています。

      ・うつわのお値段も載っていますが、前述のとおり、あくまでも参考程度。

目次

– 基本知識


○九州沖縄やきもの産地


○中国四国やきもの産地


○近畿やきもの産地


○中部北陸やきもの産地


○関東東北やきもの産地


– やきものの東西交流


– 陶磁器の基礎知識

本書の特徴

ディープな豆知識


目次に掲載されている本道のやきものの話のほかに、ディープな豆知識が多数紹介されています。陶磁器好きの方なら、興味深く読める内容ばかりです。他の類似のやきものの本では、なかなかお目にかかれない話ばかりで本当に面白いです。

やきものの特徴が分かりやすい


各地のやきものの特徴が大変分かりやすく解説されています。特に歴史的なものや、伝統に忠実に制作されているやきものを見るときには参考になります。ただし、最近は作陶している土地と、作家の作風が必ずしも一致しないことも多いので、単純に当てはめるのは注意した方がいいと思います。

細かい特徴まで解説

ざっくりした特徴に留まらず、細かい特徴まで丁寧に解説しています。

例えば唐津焼きに関して、同じ唐津の中でも「斑唐津」「絵唐津」「粉引唐津」「三島唐津」「朝鮮唐津」「掻落とし唐津」といった多彩な種類のやきものがあり、それぞれの詳細な製法や特徴などまで解説しています。

部位ごとの詳しい解説

1つのうつわの正面、側面、見込、高台まで、別々の写真で部位ごとの詳しい解説がされています。ここまで写真を使って、詳しく部位の解説をする本は珍しいですね(^^)

立体的にうつわについて知ることができます。

技術的な詳しい解説

全般的な技術の説明にとどまらず、詳しい解説がされています。
例えば、「小鹿田焼」の伝承技法は、作例も含めて詳しく解説されていました。

やきものの歴史的な流れ


一言でやきものといっても、同じやきもののカテゴリーの中でも、歴史的な流れの中で系統がいろいろ分かれています。簡潔な説明ではありますが、そういったところまで網羅しているのには驚きました。

オールカラー


全巻通じて、カラー写真がふんだんに使われています。

まとめ

「やきもの愛好会」が編集しただけあって、徹底的に必要な知識を凝縮した感がある本です。

正直に言うと、やや過剰ではないかというほどのこだわり振りなので、読み進んでいくとやや混乱してしまう点もあるかも知れません。

もう少し分かりやすく整理した方がいいのではないか、と思わないではありませんが、とにかく内容の充実度と密度は、他の類書の追随を許さないレベル。オススメです。

紹介されている作品が優れたものが多く、目の保養になりますし、うつわを見る上で必要な審美眼が磨かれる本です。

巻末の用語集にいたるまで、書き手のやきものに対する愛情、こだわりが横溢している本書。

ぜひ一度手に取ってみて頂ければと思います。

この投稿が2024年最後の投稿となります。
当ブログをご覧頂いて、ありがとうございました。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

よいお年をお迎えください。😊

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