食器棚の魅力を教えてくれる一冊!「あっちこっち食器棚めぐり」伊藤まさこ
うつわを愛する人にとって、食器棚というのは特別な家具です。
お気に入りのうつわを大切にしまっておく場所だから、こだわりたいもの。
今回は、いろいろな人が愛用している食器棚をめぐるという面白い本に出会いました。
普段なかなか拝見することが少ない魅力的な食器棚めぐりです。
「芸術新潮」の連載「あの人と食器棚」だったもの(2020年2月号~2021年8月号)に加筆修正し書籍化したものです。取材は2019年11月からで、ちょうど新型コロナウィルスのパンデミックが起きる時期と重なっていて、そういう面で苦労されたようです。
著者について
著者の伊藤まさこさんについて、簡単にご紹介します。
1970年横浜生まれ、文化服装学院卒業。「暮らし」のスタイリングを手掛けられています。
関連する著書も多数あります。
私は以前、「伊藤まさこの台所道具」という本を読みました。お気に入りの台所道具とそれを使ったレシピ、それから5人ゲストの著名人の台所道具とレシピも紹介している本です。テキスト、写真、レイアウト、構成、装丁まで、センスが光る読んでいて心地よい本でした。
台所についてとか、家事についてとか、おべんとうに関してなど、「暮らし」に関するテーマについて、いろいろな本を出されています。それぞれ伊藤さんの独自の視点が光る本です。
「ほぼ日」の中に、自らプロデュースした商品を販売するサイト「Weeksdays」を運営するなどの活動もされています。
本書の構成
本書では、いろいろな分野で活躍されている方、17人の17の食器棚が紹介されています。
ギャラリーオーナー、料理家、ファッションデザイナー、バイヤーなど。それぞれ伊藤さんがお仕事やプライベートで親交がある人たち。紹介される食器棚は、ほんとうに多種多様で驚かされました。
食器棚紹介は、こんな感じの構成になっています。
○見開き2ページのエッセイ
○見開き6ページの写真
○最後の見開きページに 「器を選ぶ」「盛る」「食べる」「レシピ」が紹介されます。
伊藤さんがお台所をお借りして、お料理して一緒に食べるスタイルになっています。
ゲストの方にお住まいの家や食器棚についてのお話しを伺って、伊藤さんがエッセイを書かれています。写真は、キッチンや食器棚、うつわなどが多くて、それぞれ丁寧なキャプションが付いています。このキャプションにはうつわの歴史やデザイナーの話など、参考になることが盛り沢山。読み物としてもとても楽しいものになっています。
最後の見開きの「器を選ぶ」「盛る」「食べる」「レシピ」は、伊藤さんがゲストと一緒にお食事をつくって召し上がるまでの流れが感じられるかたちになっています。使われるうつわやダイニングの様子などが紹介されていて、こちらもその場に参加しているかのような臨場感を共有することができます。
目次
はじめに
冷水希三子さん 料理家
人生も食器も巡り合わせ
関根由美子さん リネンショップオーナー
しずかで、おだやかな新居
山本祐布子さん イラストレーター
江口宏志さん 蒸留家
私のコックピット
越智康貴さん フローリスト
夢々しい食卓
うちの和食器
うちの洋食器
おさだゆかりさん 北欧雑貨店オーナー
器のプロ
引田かおりさん
引田ターセンさん ギャラリーオーナー
ものと体力
植松良枝さん 料理研究家
一に掃除、二に掃除
岸山沙代子さん ファッションデザイナー
あこがれの籘
土切敬子さん 台所道具店店主
ツチキリシステム
一田憲子さん 編集者
床の間の食器たち
吉川修一さん ライフスタイルカンパニーオーナー
ヴィンテージ物件マニア
仁平綾さん エッセイスト
さよならニューヨーク
在田佳代子さん ファブリックショップオーナー
ふたつの家
カナヤミユキさん デザイナー
二人三脚の家づくり
内田真美さん 料理研究家
真美風茶棚
鈴木善雄さん
引田舞さん ブランドディレクター、インテリアデザイナー
和家具とキッチン
橋本靖代さん ファッションデザイナー
凹んだ棚板
その後の食器棚
北欧雑貨店オーナーのおさだゆかりさんの本は、本ブログでもご紹介しているので、ご興味があれば、ぜひご覧ください。
北欧雑貨への愛情溢れる一冊「北欧 ヴィンテージ雑貨を探す旅」おさだゆかり
食器棚の使い方は常に変化する
この本を読んで感じた一番の感想は、「人の食器棚を見せてもらうのは楽しい」ということ。
お住まいの方の考え方、趣味やセンス、生活のスタンス、ものとの向き合い方などがストレートに伝わってくるということです。
オープンの食器棚を選ばれる方は、ミニマルなライフスタイルを指向していたりします。ミニマルに最小限の食器だけをオープンな食器棚に美しく置かれたりしています。
扉付きの食器棚は、扉が閉まっていると空間がとてもすっきり見えます。きちっと整理整頓が好きな方は、こういうタイプの食器棚を。
自分の動きに合うように、食器や道具を工夫して収納して、ストレスなくお料理や配膳ができるように工夫して食器棚を使う方がいたり。
リビングにカップボードを置いて、ゆったりと美しいうつわやガラスを置いて、ショーケースのように演出する方がいたり。
どれが正解ということではなく、自分のライフスタイルや価値観にあった食器棚の使い方をするということなのだと思います。そしてライフスタイルは常に変化するものなので、それに合わせて食器棚の使い方も変わっていく。。。そういうことなのだと感じました。
食器棚のカスタマイズ
もう一つ面白かったのは、食器棚をカスタマイズする人がいること。
この本の中で、そういう話がいくつか紹介されていました。
キャスター付きの可動棚をつくって移動できる食器棚にしたり、廃材を使ってカトラリーボックスをつくったり、家の中の空きスペースを改修して食器棚にしたり。。。
確かに買ってきた食器棚は完璧なものではないし、自分なりのニーズや使い勝手に合わせて、自在に食器棚をカスタマイズすることって楽しいですよね。
最初は面倒臭いと思ってしまいがちですが、その後に使い勝手を考えると、そういうチャレンジもアリなんだ、と感じました。
まとめ
いろいろな食器棚を訪ねた結果、筆者の伊藤さんは、次の3つのフィロソフィーに気付いたそうです。
「循環させる」
「きれいに保つ」
「自分のアンテナを信じる」
私も大いに共感しました。
増えるものを溜め込むのではなく、十分楽しんだうつわは次の場所へ、新しいうつわを迎え入れるように「循環させる」。
せっかく自分のところに来たものたちを「きれいに保つ」。
自分の感性やセンスを信じて、ぶれずにものを選んで付き合っていく「自分のアンテナを信じる」。そうすることで、一貫した美的な感覚が宿るキッチンや食器棚になっていくはず。
そんな刺激がもらえる良い本だと思います。
ぜひご覧になってみてください。
それではまた。。。