日本を愛したリーチの素顔を知ることができる!『バーナード・リーチ 日本絵日記』


日本を愛したリーチの素顔を知ることができる!『バーナード・リーチ 日本絵日記』

本書は、民藝や陶磁器の分野で、日本と英国の文化的架け橋として、柳宗悦とともに重要な役割を果たした英国人バーナード・リーチが日本を旅しながら、自ら記し描いた貴重な絵日記です。本ブログでは、原田マハの小説「リーチ先生」や、「民藝ーMINGEI」展のレポート「バーナード・リーチ作品集」などを紹介してきましたが、やはり、リーチの肉声が感じられる本書もぜひ紹介したくなりました。

本書が書かれた背景

バーナード・リーチは、何度となく日本を訪問して、日本のやきもの文化を深く理解し、その魅力を英国に伝える、あるいは英国の文化を日本に伝える役割を果たしてきました。

その中で、19年ぶりとなる日本訪問の旅を書き記した、いわゆる旅日記のようなものになります。リーチが日本に滞在した、昭和28年2月16日から翌昭和29年10月26日までの約1年8ヶ月のあいだに書かれたものです。

リーチは、この旅で書いた日記を各国の友人に謄写版にして送付することを決意していて、その成果が本書になっています。詳細は、本書のまえがき、謝辞と献辞、緒言、序に詳しいのでそちらをご覧ください。

本書の概要

本書を読んで驚いたのは、まさに日本を縦横無尽に巡ったといっても過言ではないほどの忙しさ、充実ぶりです。陶芸家はもちろん建築家や彫刻家などの芸術家と会って語り合ったり、日本各地で食事会、座談会、講演会、工藝や芸術についての議論、地元の名士との面談、土地の人たちからのもてなし、宴席やパーティ、大使などの晩餐会、自らの作品の個展や展覧会、旧友たちとの本音の語らいなど。。。ここに書き並べるだけでも頭が混乱しそうなほどの忙しさ。この強行軍の旅を、リーチはなんと67歳という年齢でやり抜いたのです。驚くべきパワーと忍耐力と持久力です。

ここで本文の章立てを掲載しておきます。
いかに忙しく充実した旅だったかが、章立てをみるだけでも感じられると思います。

第一章 序曲、東と西

第二章 日本ー第一印象

第三章 深まる印象

第四章 山陰・山陽の旅

第五章 濱田の益子

第六章 山国の旅ー松本

第七章 穫入れの秋の本州をめぐる

第八章 東京ー京都

第九章 九州小鹿田にて

第十章 むすびそしてお別れ

本書の魅力とは

1つめの魅力として挙げたいのは、絵日記としての緻密さと思索の奥行きの深さです。

日々の出来事を丹念に書き記しながら、同時にその出来事を理解し、自分の考えや感じたことを率直に書き記していること。幅広い知識と深い洞察力、真摯に考えを巡らせる聡明さがなくては、とてもできるものではありません。

2つめは、日本に対する深い愛情と、それゆえの日本の現状を憂える気持ちです。

絵日記の中で何度も語られますが、リーチは、日本の歴史に培われた美しい文化、精神性、自然に対して深い畏敬の念と愛情を持っています。一方で、敗戦国である日本が、西洋の文化を急速に受容して、問題意識も持たずに盲目的に西洋化されていく姿に心を痛めて、懸念を隠そうとしません。昭和30年頃の時代の話ですが、俯瞰的にみると、現代の私たちも忘れてはならない視点だと感じます。

3つめは、困惑したことや西洋人ならではの悩みなどを率直に記していることです。

まさに日記らしい日記といえばいいのでしょうか。とくに身長が高いリーチが、一般的に身長が低い日本人に合わせてつくられた住宅や家具などの寸法にあわず、四苦八苦しながら、疲れて果ててしまう様子などは、リーチさんには申し訳ないけれど、その飾らない人柄、ユーモアのセンスが感じられて、おもわず微笑んでしまいます。前述のような、超強行軍のスケジュールですから、それに翻弄されて体調を崩してしまうこともしばしばで、そんな苦労も飾らず記しています。

最後に挙げたいのは、芸術家としてのリーチの力を改めて感じたところです。

絵日記なので、各地に訪れたときに、求めに応じたり自ら興が乗ったときに描いた素描が、多数掲載されているのですが、その絵が素晴らしいのです。陶芸家であり画家であるリーチの絵が上手なのは、当たり前といえば当たり前ですが、簡単にサラッと描いた絵なのに、モチーフの特徴の的確な捉え方に毎回感心してしまいました。一瞬の筆捌きでやきものに絵付けをする陶芸家ならでは、でしょうか。そして、各地で制作した素晴らしい陶芸作品の写真も同時に楽しめるのです。楽しくて仕方ありません。

私の拙い説明では、なかなか理解して頂けないかも知れません。百聞は一見にしかず。ぜひ手に取ってご覧ください。旅行のお供に連れて行くのもオススメです。

また素敵な本に出会ったら、ご紹介したいと思います。

それでは。。。

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