やきもの文化の歴史とデザインを楽しく学ぶ『あたらしい日本洋食器の教科書』


やきもの文化の歴史とデザインを楽しく学ぶ『あたらしい日本洋食器の教科書』

洋食器や和食器、作家もののうつわに関する書籍や雑誌はいろいろあり、見かけたことも多いと思います。そんな中で、大量生産品である日本の洋食器について書かれた本は、今までほとんどありませんでした。筆者も「はじめに」の中で、そのように書いています。

私が手に取ってみたのも、同じように感じたからでした。

内容を紐解いてみると、日本洋食器の代表的なメーカーやブランドの情報がたくさんあって、知らなかったことも多く、期待した通りでした。

今回ご紹介する本は、新しい視点で私たちが慣れ親しんできた身近な日本洋食器を知るための手助けをしてくれる素晴らしい本です。

あたらしい日本洋食器の教科書 日本史とデザインで楽しくわかる「やきもの」文化 (あたらしい教科書)

日本洋食器の貴重な情報源

日本の洋食器について書かれた本は少ないので、今まではメーカーやブランドについて知りたければ、ネットでホームページの情報などを探してみることぐらいしか出来ませんでした。

本書は日本の洋食器がテーマになっているので、内容がとても充実していて、あまり知られていない情報が満載されています。

日本の代表的な洋食器メーカーとして知られるノリタケ、大倉陶園、ニッコー、ナルミの4社について、それぞれ見開き6ページで紹介されています。

創業やブランド名の由良、創業地、特徴、歴史といった代表的な情報はもちろんのこと、歴史的な創業のストーリー、日本洋食器の歴史の中での位置付け、企業理念、代表的な技術などが紹介されています。うれしいのは豊富な写真で、そのメーカーの代表的な商品ラインナップが紹介されているところです。今まで知らなかったそのブランドの魅力を知ることができます。

洋食器メーカーだけでなく、やきもの産地別に代表的なやきものも取り上げています。有田焼、波佐見焼、九谷焼、薩摩焼、瀬戸焼が紹介されています。特に世界を魅了した日本磁器の絶対王者として知られる有田焼は、代表的なメーカーである香蘭社、深川製磁がピックアップされています。

そのほかに、日本の洋食器に関する重要な専門用語の「上手物」「民藝」「茶陶」について解説しています。これらの専門用語は、日本のうつわ文化を語る上で欠かせないものなので、このように丁寧に解説してくれると理解が進みます。

エッセイのように楽しく読める

本書のタイトルに「教科書」という言葉が入っていますが、実際は教科書という言葉が連想させる堅苦しい雰囲気はありません。

それぞれの解説ページの記述も平易な言葉で分かりやすく書かれています。また”column”として、本編の内容に関連したトピックが解説されていて、より理解が深まるように工夫されています。また、”もっと深める食器 x ⚪︎⚪︎”という形で、本編の内容をより深く理解するための解説が付されています。

このように様々な形で、やきもの文化の歴史とデザインが学べるように工夫されているのですが、全体を通して印象的なのは、エッセイのように楽しく読めるということです。文体は平易で、様々な切り口の話題が提供されていて、書き手の考え方や思いがストレートに書かれているので、まるでエッセイを読んでいるように感じます。飽きることなく楽しみながら読み進めることができる、そんな印象です。

文字が苦手な方のために4コマ漫画による解説も用意されていて、まさに至れり尽くせり。読み進んでいて気分転換にもなる心憎い配慮が感じられます。

美しい写真やビジュアルが充実

本書のもう一つの特徴は、ヴィジュアルの魅力です。うつわを紹介する美しい写真や上品なイラストがふんだんに使われています。それぞれのビジュアルにはキャプションや注釈が丁寧に付されています。

うつわの写真は、うつわのシリーズ全体の雰囲気が感じられるようなもの、うつわが使われるシーンがイメージできるお料理やスイーツが盛り付けられたもの、複数のうつわを一緒に並べたものなど、アレンジ方法も工夫が凝らされていて高いクオリティが感じられます。テーブルコーディネートにもセンスとこだわりが感じられて、うつわ好きの私も参考にしたくなります。

やきもの文化について学ぶことができる

洋食器・和食器の基礎知識は、冒頭の第1章で紹介されています。

大抵の陶磁器を紹介する本には、このような基礎知識をまとめた説明があることが多いですが、そんなこと知っていると侮ることなかれ。興味深い歴史的なエピソード、技術的な豆知識、筆者ならではの知見もエッセイのように楽しめるように書かれているので、勉強になることもきっとあります。

そういう意味でも見逃せない内容になっています。

索引、参考文献が充実

本書では内容が多岐にわたるので、その記事の切り口によってさまざまな場所に同じ用語が出てくることが多く、索引で調べることができることが大切になります。

その点でも抜かりなく、巻末には詳細な索引が用意されています。次の分類で、それぞれ索引があるので、調べたい用語があるときにとても便利です。

ブランド・メーカー・作家名
人物名
用語

また巻末の参考文献も、カテゴリー別に並べてあるのでレファレンスとして役に立ちそうです。これを見るだけでも、多面的な視野で執筆されていることが分かります。

陶磁器
陶磁器 雑誌
陶磁器 図録
陶磁器 論文
美術・工芸・茶道
歴史・宗教
文芸・文化など

協力先一覧も、読者が自分で調べたいときに大いに役立ちそうです。

まとめ

繰り返しになりますが、日本洋食器の重要な情報源になりますし、パラパラを読み物として楽しむこともできます。また、索引を上手に使えれば、知らなかったことを調べたい時の参考資料にもなるという形で、うつわ好きの私たちにとって大いに役に立ちそうな一冊です。

ぜひ一度、手に取ってご覧ください。おすすめです。


洋食器を文化と歴史の文脈の中で学べる一冊!「あたらしい洋食器の教科書」

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