【日本の陶磁器を訪ねて】クラフトフェアまつもと 2024 その5「松本ホテル 花月」


【日本の陶磁器を訪ねて】クラフトフェアまつもと 2024 その5「松本ホテル 花月」

今回の「クラフトフェアまつもと 2024」で、宿泊するホテルを探すのにとても苦労しました。(→詳しくは、【日本の陶磁器を訪ねて】クラフトフェアまつもと 2024 その1)クラフトフェア期間だったから混んでいたのですが、ここまでとは思いませんでした。

何とか偶然にも宿泊予約ができたのが「松本ホテル 花月」でした。

たまたま予約できたホテルというだけだったのですが、これが予想に反して素敵なホテルだったので、周辺の街づくりの視点も交えて、少し詳しくご紹介したいと思います。

「松本ホテル 花月」の歴史

創業は1887年(明治20年)

今から実に137年前です!
本当に歴史あるホテルですね。松本市で最古のホテルといわれています。松本市は古くから松本城の城下町として栄えた信州最大の商業都市でした。

当時は洋風建築が流行していて、洋風建築の旅館として始まったようです。現在のホテルの喫茶室エントランスの三角屋根と看板は、当時の建物のエントランスを喫茶室の入り口として活用したもの。和洋折衷の意匠が、明治期の時代の雰囲気を感じさせてくれます。

喫茶室「八十六温館」のエントランス
喫茶室「八十六温館」の看板

ホテル周辺のエリアは、松本城から徒歩数分の至近距離にあります。かつて上土町(あげつちまち)と呼ばれたエリアです。松本市が公開している資料によれば、上土という地名の由来は、松本城の東側東門前の馬出し廓の堀の土を上げたところから町名となったとのこと。「上土町」の旧町名標識も設置されています。松本市のHPで詳しく説明しているページがあります。興味がある方は見てみてください。面白いですよ!

松本市「旧町名標識を巡るウオーキングをしてみませんか?」のページ

松本市「旧町名標識」

上土町は、かつては映画館や飲食店が立ち並ぶ歓楽街だったそうです。現在は、大正ロマンが残る通り「上土商店街」として知られています。

「上土通り」のサイン
「松本市下町会館」 1階にはカフェが入っています

ホテルのすぐそばの交差点の角にある煉瓦タイルの建物は「松本市下町会館」です。
松本市下町会館は、昭和初期に建てられた擬洋風建築でしたが、老朽化したため、曳家移転、ファサード部を保存、補強工事を施して保存再生されたものです。

現在の1階には、「カフェあげつち」というカフェが入っています。上土大正ロマンの街づくり協議会が運営主体となったカフェが入っています。

「白鳥写真館」

松本市下町会館の左隣には、「白鳥写真館」が建っています。白鳥写真館は、築90年を経て使い勝手の問題と耐震性能の問題があって、現代の使用に耐えるように街並みを継承しながら再生活用された建物です。写真館としては使われていないようです。

昭和25年創業の写真店「増田写真店」

松本市下町会館の向かいには、昭和25年創業の歴史ある写真店「増田写真店」があります。ショーケースには、ドイツの二眼レフの名機「ローライコード」などが飾られて、古き良きフィルムカメラの魅力を伝えています。

「古本喫茶 想雲堂」

「松本ホテル 花月」の向かいにも、風情がある建物があります。「古本喫茶 想雲堂」の建物で、大正時代の看板建築の店舗とリフォームしたものです。

看板建築

その他にも、かつてピカデリーホールという映画館だった建物が、平成30年から「上土劇場」として活用されたり、街ぐるみで歴史を尊重しながら継承していて、このような歴史が感じられるエリアになってきているのです。とても素晴らしいことだと思いました。

ホテルの大きな転換期 2016年のリブランドオープン

「松本ホテル 花月」の大きな転換点は、2016年4月のリブランドオープンです。

コンセプトは「民藝フィロソフィ 松本の日常の記憶」
主な考え方は次の通りです。

  1. 外装は増築の時代ごとに3つの棟を白からグレーに塗り分け
  2. インテリアは、松本民芸家具と馴染むダークブラウンを基調とした重厚感のある空間に
  3. ロビーには開業当時からの松本民芸家具を配置し、コンシェルジュが常駐

このリブランドオープンで、松本が持つ歴史的な文脈、民芸の歴史とシンクロしつつ、松本という街と連携し発展しようとする方向性がキッチリ打ち出されました。これによって、ホテルの歴史的な価値がより高まったと思います。

実際に私たちが宿泊したときも、海外からの団体客が大勢来ていましたが、ホテルの歴史的な雰囲気に感銘を受けているように見受けられました。上土エリアの歴史的な街並みにも溶け込んでいて、ホテルの魅力が際立ってみえました。

運営会社:株式会社アゴーラ・ホスピタリティーズ
建築デザイン:永山 祐子
インテリアデザイン:濱川 秀樹

プレスリリース

「松本ホテル 花月」の魅力

「民藝フィロソフィ 松本の日常の記憶」というコンセプトのもと、それぞれの空間が松本の民藝の歴史を尊重しながら作り込まれていました。

ホテルのエントランスは木製ルーバーが目印

エントランス
印象的な木製ルーバーのエントランスから入ると、印象的なステンドグラスが出迎えてくれます。明るい外部から、ダークブラウンの落ち着いたインテリアへと一気に雰囲気が変わります。

エントランスのステンドグラス

ロビー
ホテルの中で、最も印象的で素敵な空間はこのロビーです。松本民芸家具が配置されていて、迫力ある陶芸作品や陶芸雑誌や松本に関する書籍、クラフトフェアのパンフレットなどがさりげなく置かれています。

ロビーというよりも、民芸ギャラリーと言っても過言ではないですね。とても居心地が良い空間です。リブランドのコンセプトを体現していると感じました。

フロントから見たロビー
ロビー全景
ロビー正面の飾り棚 松本の陶芸作品が飾られている
収蔵されている本 松本に関するものが多い
さりげなく置かれた雑誌「民藝」

雑誌「民藝」

レストラン「I;caza」
夜は外で食べてしまったので、残念ながらディナーは頂きませんでした。「I;caza」は長野県の言葉で「行こうよ!」という意味で、松本の風土が生み出す食材にこだわった料理は、このホテルの魅力の一つ。朝食で頂いた「花月オリジナルカレー」は絶品でした。インパクトがある辛さで、とても濃厚で深みのあるカレー。レトルトも販売していたので、大人買いしました!

レストラン入口
レストランのインテリア
「花月オリジナルカレー」 とても美味しい絶品カレーでした。レトルトも販売されています

「八十六温館」
混んでいたのとカフェでお茶をするタイミングを逸してしまい、写真はリンク先からお楽しみください。とても落ち着いた雰囲気のカフェです。

八十六温館

「セレクトショップ tsugumu」
松本の民芸品や、銘菓、館内着などが置かれています。インテリアのセンスがよくて、置かれている商品も素敵で、眺めていると楽しくなります。外からもよく見える明るいショップです。

「セレクトショップ tsugumu」

ゲストルーム
客室は、いろいろなサイズの部屋があります。松本民芸家具が随所に置かれていて、ダークブラウンの木製建具や梁、しっくい壁などレトロな雰囲気が素敵です。まるでヨーロッパのホテルにいるかのような気持ちになります。ぎりぎりで何とか予約できた私たちの部屋は、下がり天井がある屋根裏部屋でしたが。

松本ホテル 花月

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NBS長野放送 
【松本ホテル花月】「民藝精神」未来への便り(2021年11月放送)

今回は、たった1日しかも屋根裏の狭い部屋しか予約できませんでしたが、ホテルの魅力を十分に満喫することができました。

次回はぜひ2~3泊して、ホテルと松本を満喫したいと思っています。

みなさんも、ぜひ一度お泊まりになってみて下さい。
きっと気に入ってくれると思います!

次回は、【日本の陶磁器を訪ねて】クラフトフェアまつもと 2024 その6。5月の工芸イベント「工芸の五月」で松本市内を散策します。

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