
いま人気の金継ぎについて考えよう!金継ぎ技法の概要を知る『金継ぎ考』
今回は、最近国内外で人気が高まっている「金継ぎ」について、今までにいろいろ考えていたことをお話ししたいと思います。
当ブログを読んで下さっているみなさまは、よくご存知と思いますが「金継ぎ」は、割れたりヒビが入ってしまったうつわを、漆や金属の粉で美しく修復する日本で古来から行われてきた伝統的な技法です。
うつわを愛する人だったら、一度ならずとも興味を持って、自分でもやってみたいと考えますよね。そういう自分も、ずいぶん前から興味を持っていて、さまざまな「金継ぎ」の本を読み漁ったり、実際にやってみたりしてきました。
そんな中で気付いたのは、「金継ぎ」にはいろんなやり方があって、どれが正解と言い切れるものでもない、ということ。
とは言っても、実際にどのやり方で「金継ぎ」をやるのかを決めないと取り掛かれません。
今回はそんな「金継ぎ」について、いろいろ思うところを書き記してみたいと思います。
「金継ぎ」が人気になった理由
「金継ぎ」の人気が高まってきたのは、コロナ禍によるステイホーム期間だと言われています。
それまではあまり「金継ぎ」を知らなかった若い世代が興味を持つようになって、実際に「金継ぎ」をやってみたいと思った人が増えたというアンケートデータもあるようです。
また、高度成長期のころのように、新しいものをどんどん作って売って、壊れたら捨てて、また新しいものを買えばいいといった、スクラップアンドビルドの考え方は、地球環境やエコに対する意識が高くなってきている昨今、受け入れられるものではなくなってきました。
思い出や愛着があるものを大切にして、使い続けるという考え方は、今の時代の肌感覚にぴったりなのだと思います。それを象徴するのが「金継ぎ」という日本独自の価値観です。
また、「金継ぎ」でどのように修繕や修復をするかは、「金継ぎ」をする人のセンスや個性をそのまま表現できるので、そういう点でもクリエイティブな魅力があるのでしょう。
最初の金継ぎ体験
そんな感じで、私も「金継ぎ」をやってみたいと思ったのですが、実際にどうすればいいのか、正直よく分かりませんでした。
そんな中で出会ったのが、「金継ぎキット」です。
最近では、「金継ぎ」人気が後押しとなって、さまざまな「金継ぎキット」が発売されていますが、私がやり始めたころは、あまり選択肢は多くありませんでした。
「簡単!おうちで金継ぎ」という、大人のおしゃれ手帳特別編集の別冊本で、合成うるしやうすめ液、金属粉や竹串などが付属していて、「金継ぎ」のやり方が写真付きで解説されているものでした。実際にやってみると、本当に簡単に「金継ぎ」ができました。
ところが何度かやってみると、この簡単な「金継ぎ」は、単純な割れや欠けを直すのは比較的容易にできるのですが、複雑なヒビや欠けなどになると、どうもうまく出来ません。
これに満足し切れなかった私は、「金継ぎ」についてもう少し深く知りたくなって、他の「金継ぎ」の書籍なども調べるようになりました。

代表的な「金継ぎ」技法
ここでご説明する「金継ぎ」技法は、あくまでも代表的な技法を簡単に説明したものなので、詳細に内容を知りたい方は、改めて書籍などで確認して頂きたいと思います。
①本漆による伝統的な【金継ぎ】
天然の本漆を使った伝統的な技法です。
ひび、割れ、欠けに対して、本漆をベースにして接着剤、パテ、ペーストを作って、適宜修理をしていくものです。本漆を使うことが大前提なので、作業を行うたびにムロに入れて湿度を与えて、漆を乾燥させる工程が必要になります。
詳細の説明は、書籍やネット記事に譲りますが、全て漆と天然材料を用いた伝統的な技法で、最もオーセンティックな(正統な)やり方です。しかし、手間と時間とコストはかなりかかります。
全て天然素材のため、安全性が最も高い!
本当は、この技法で「金継ぎ」をやりたい!憧れの技法です!
<参考書籍>
繕うワザを磨く 金継ぎ 上達レッスン (コツがわかる本!)
②本漆と合成樹脂を併用した【金継ぎ】
合成樹脂(エポキシ接着剤、エポキシパテ)で、接着や穴埋めを行なって、接合部の表面を本漆で覆って、金属粉をかけるという伝統技法+現代技術のいいとこ取りをした技法です。
漆を乾燥させる工程は、最後の仕上げで必要になるだけなので、手間と時間は比較的かかりません。タイパが良い技法です。
表面の仕上げは天然素材の本漆なので、うつわを使用するときの安全性は高いです。
<参考書籍>
金継ぎ一年生 本漆で、やきもの、ガラス、漆器まで直します
③合成うるしと合成樹脂による【金継ぎ】
合成うるしと合成樹脂といった現代の技術を駆使した簡便な技法です。
合成樹脂(エポキシ接着剤とエポキシパテ)で、接着や穴埋めを行い、合成うるしに金属粉を混ぜたもので仕上げます。最も簡便で、手間も時間もかからず、タイパは最高です。
ただし、金属粉を混ぜた合成うるしの作業性があまりよくないので、私の場合はなかなか納得できる仕上がりにならないのが悩みの種でした。
合成うるしなどの合成樹脂は、食器用としての安全性にやや不安が残るとされています。口につけず、観賞用なら大丈夫ということですが、観賞用というのもどうかなと。。。
さきほどご紹介した「簡単!おうちで金継ぎ」は、③の技法になります。
<参考書籍>
ゆる金継ぎ: 合成うるしで、簡単&楽しい!
どの「金継ぎ」技法を選びますか?
大きく言うと、先にご紹介した3つの技法があると思うのですが、貴方だったらどのやり方を選びますか?

私は、①と③のいいとこ取りをした②が、今のところ一番自分には合っていると思っています。
現代技術を活用して、手間と時間を減らせるところはできるだけ減らして、最後は本漆の正統性が高い仕上げにするというのが、トータルの価値が一番高い気がしています。
いかがでしょうか?
とは言っても、簡便に直せばいいだけなら③を選んだり、とても大切なうつわなので、どうしても①でやりたいということもあるかも知れません。直したいうつわや、そのうつわをどう使いたいかにもよると思いますし。
どの技法を選ぶかは、人それぞれでいいと思います。
毎回、「金継ぎ」をするときは、こんなことが頭の中をぐるぐるしますね~(^^)
「金継ぎ」の作業はとても楽しいです。
そして、自分が手をかけて直したうつわは、本当に可愛いものです。
みなさんも、ぜひ一度「金継ぎ」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
今後、上述の「金継ぎ」の書籍のご紹介もできたらと思っています。

「金継ぎ」は、骨董やアンティークとも深い関係があります。ご興味があれば、こちらの書評もご覧ください。
骨董・アンティーク好きの方必見!『知識ゼロからの骨董・アンティーク入門』岩崎紘昌
お付き合い頂き、ありがとうございました!
それでは、また。