【書評】『リーチ先生』原田マハ(集英社)

バーナード・リーチという人物

原田マハさんの小説『リーチ先生』の主人公である「バーナード・リーチ』について簡単に触れたいと思います。

バーナード・リーチ
Bernard Howell Leach (1887.1.5 – 1979.5.6)


イギリス出身の陶芸家、画家、デザイナーで日本との関わりが深い。リーチは、1887年に香港で生まれて、幼少期に関西に住んだ時期がありました。イギリスに戻り、芸術家を志してスレード美術学校に入学。父が亡くなったため銀行員になったものの、1907年からロンドン美術学校でエッチング技法を学びます。その頃、ロンドン留学中の高村光太郎と出会うことで、幼い頃にいた日本にいきたいという気持ちが芽生えたと言われています。その後、再来日をして日本で陶芸を学び、1920年にイギリスのセント・アイヴスで、日本の伝統的な登り窯を開き、日本とイギリスの陶芸文化を融合させつつ、その思想を発展させていきます。リーチの著作や制作スタイルは、日本のみならず、世界の文化やデザインにも大きな影響を与えていきました。

バーナード・リーチについての情報は、いろいろ見つけることができます。参考になりそうなサイトをいくつかご紹介しておきましょう。

Wikipedia

日本民芸館

GALLERY ST. IVES

DESIGNER’s TILE LAB

益子陶芸美術館

東京文化財研究所

原田マハさんの小説『リーチ先生』は、バーナード・リーチの波乱万丈の人生を描いていて、セント・アイヴスで西洋初の登り窯を築窯しLeach Pottery(リーチ工房)」を開いて、日本とイギリスの陶芸の文化を繋げるまでのストーリー。素晴らしいのは、リーチ先生のこのように起伏が激しい人生でさまざまな出来事に直面する中で、家族や友人に対する真摯な態度や振る舞いが、リーチ先生の揺るぎない信念、等身大のリーチ像を感じさせてくれるところ。人の気持ちを温かく伝えてくれる原田マハさんらしさが感じられます。登場人物は史実に基づいてはいるものの、ここで描かれている人物設定や交流はフィクションであり、作家の想像力がいかんなく発揮されている作品だと思います。

原田マハの魅力

次に、原田マハさんの紹介をしたいと思います。

原田マハ(1962.7.14-)

日本の小説家、キュレーター、エッセイストです。関西大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術専修卒業。その後美術関係の仕事に従事し、ニューヨーク近代美術館勤務後、2002年にフリーのキュレーターとして独立されました。

この経歴から分かるように、文学と美術の知見をバックグラウンドに持っていて、美術や芸術をテーマにした作品が多い方です。読みやすく平易な文章、しっかりしたストーリー構成にいつも魅了されます。私が読んだ原田マハさんの作品が、何冊かあるのでご紹介します。

『楽園のカンヴァス』
2012年 第25回山本周五郎賞受賞、第147回直木賞候補、第10回本屋大賞第3位
▶️ルソーの代表作『夢』をめぐる真贋判定を巡るミステリー

『キネマの神様』
2012年 第8回酒飲み書店員大賞受賞
▶️映画を諦めた男が、かつての夢と家族を取り戻すものがたり。かつて飯田橋にあった名画座「ギンレイホール」が原作のモデルです。私にとっても、いろいろな名画を鑑賞した思い出の映画館でしたが、惜しまれつつ、2022年に閉館してしまいました・・・

『ジヴェルニーの食卓』
第149回直木賞候補
▶️原田マハさんが美術や芸術家を見る眼差しはとても優しくあたたかい。20世紀を代表する画家を描いた史実に基づいたフィクション4編

『美しき愚か者たちのタブロー』
第161回直木賞候補
▶️敗戦国日本で、本物の美術を見せる美術館を目指した人々の熱き情熱のものがたり

NHK鑑賞マニュアル 美の壺 『民藝のやきもの』

観ていらっしゃる方も多いと思うのですが、私たちのお気に入りの番組に「NHK鑑賞マニュアル 美の壺」という番組があります。鑑賞マニュアルという呼び方はちょっと馴染みがないのですが、いわゆるNHKの「美の壺」です。NHKの受信料は、この番組のために払っているようなものです(^^)

「美の壺」でも、バーナード・リーチが取り上げられた回がありました。リーチだけではなく、民藝のやきもの全般がテーマになっている『民藝のやきもの File 540』です。その中の「美の壺 二」スリップウェアについてのパートで、日本の民藝運動への影響が触れられています。

NHK 美の壺『民藝のやきもの』 
→放送概要など

気になるTips:美の壺『民藝のやきもの File 540』 
→詳しい解説が見られます。とても充実した内容です!必見です!

スリップウェア 
→馴染みが少ない表現かも知れません。解説はこちら

以上、原田マハさんの『リーチ先生』の書評でした。これからも、素敵な本に出会ったら、ご紹介していきたいと思います。それでは。。。

▶️2024年のGWに訪れた、有田&波佐見の陶器市のお話はこちら

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