『バーナード・リーチ作品集』リーチの論考:柳宗悦による独自の視点に学ぶ


バーナード・リーチ作品集 表紙

『バーナード・リーチ作品集』リーチの論考:柳宗悦による独自の視点に学ぶ

本書について

この作品集は、バーナード・リーチの作陶100年を記念して刊行されたものです。日本民藝館所蔵のバーナード・リーチ作品、約180点が紹介されていますが、そのほとんどが柳宗悦に選ばれたものです。そういう点で意義深く、価値ある作品集になっています。

本書の構成

本書の構成について説明します。

前半に作品の写真が並び、そのうしろに解説が掲載されています。
解説の目次は、次のとおりです。

刊行によせて

リーチの位置           柳宗悦

バーナード・リーチの人と作品   鈴木禎宏

The Unknown Craftsman のこと   水尾比呂志

図版目録

バーナード・リーチ年譜      鈴木禎宏

リーチの位置 柳宗悦

バーナード・リーチの長年の朋友、柳宗悦によるリーチの論考です。『柳宗悦全集』第十四巻に基づいた内容になっているようです。

柳にとって一番優れた工藝家が誰かといえば、躊躇なくリーチだと答える。

それには、大きく二つの根本的な理由があると述べています。第一は、美しさを見る眼が慥かなこと第二に、絵が描けるということだそうです。陶工の仕事の大部分は無地のものか、簡単な絵付けを試みているに過ぎないけれども、それに比べて「詩があって、見るひとをひそかに誘う趣がある」リーチの絵附けの力を絶賛しています。

リーチの作品の「素直で温和な親しみのある作品の価値は極めて大きい」、リーチはものの見方が公平なのはその徳から来ているのだということで、リーチの人格や徳から心底敬愛していることがよくわかります。やはり長年友人として、お互いに心底尊敬しあった間柄だったからこその心からの賛辞だと感じました。

バーナード・リーチの人と作品 鈴木禎宏

日本の文学研究者、比較文学者で、バーナード・リーチの研究者である鈴木禎広による、リーチのバイオグラフィーです。日本藝館所蔵のリーチ作品と書簡を参照しながら、リーチの生涯と活動が紹介されています。

I 誕生から日本再来日まで 1887~1909

II 日本・中国滞在 1909~1920

III イギリス帰国後の活動(一) 1920~1945

IV イギリス帰国後の活動(二) 1946~1979

鈴木禎宏

The Unknown Craftsman のこと 水尾比呂志

バーナード・リーチは、十五回に及ぶ長短の日本滞在を行いました。その中で、重要な業績として注目すべきものとして、柳宗悦の美思想の英語による紹介と重要論文の翻訳が挙げられています。

柳宗悦の死後、リーチは八回目の来日を果たした際に、柳宗悦の美思想に対する深い敬念に基づいて論文の英訳を決意しました。その際に、筆者に協力を依頼して、実際に美ヶ原の山荘に籠って、ともにその作業に勤しんだときの思い出とエピソード、そしてリーチの作品に対する思いが語られています。

水尾比呂志

本書の魅力

本書の魅力は、何といっても柳宗悦の審美眼を通して選ばれたリーチ作品が数多く収録されていることです。そして、柳宗悦によるリーチの論考、リーチ研究者による権威あるバイオグラフィー、そして実際にリーチと共に柳宗悦論文を翻訳するという稀有の体験が紹介されているテキストなど、リーチ好きには堪らないコンテンツばかりです。

日本民藝館で、長く撮影を担当されてきたカメラマン杉野孝典による写真も作品のナチュラルな魅力を伝えてくれてとても魅力的です。掲載写真のレイアウトもシンプルで、写真の良さを伝えてくれます。写真は全てフルカラーで見応えがあります。

バーナード・リーチや柳宗悦が好きな方だけでなく、民藝が好きな方、陶磁器が好きな方にはおすすめできる一冊です。

これからも魅力的な書籍をいろいろ紹介していきたいと思います。

それでは。。。


バーナード・リーチの生涯を描いた原田マハの小説「リーチ先生」は、一部フィクションも含まれますが、リーチの人生を追体験することができます。

「リーチ先生」原田マハ

また、民藝に興味がある方は、世田谷美術館で開催された展覧会『民藝 – MINGEI』展のリポートもありますので、ぜひご覧ください。

世田谷美術館「民藝 – MINGEI 美は暮らしの中にある」展

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