【書評】『やきものの見方・楽しみ方』仁木 正格(主婦の友社)


「やきものの見方・楽しみ方」仁木 正格

【書評】『やきものの見方・楽しみ方』仁木 正格(主婦の友社)

著者紹介

最初に著者「仁木 正格」さんの紹介です。(本書の著者紹介から抜粋)

長年出版社で美術工芸書、特に、日本の古陶磁、現代陶芸、茶の湯のやきものなど、陶磁器分野の企画編集に携わる。陶磁器関係の取材・執筆、カルチャー講座の講師として活躍中。日本陶磁協会会員。

著書としては、
『やきものの見方ハンドブック』(池田書店)
『食器の本・有田&唐津』(角川ミニ文庫)

共同執筆

『茶の湯やきもの事典』(主婦の友社)
『茶の湯やきもの便利帳』(主婦の友社)
『すぐわかる日本の美術』(東京美術)
『すぐわかる東洋の美術』(東京美術)
『東京文化財の旅 I, II』(毎日新聞社)など

本書は平成18年(2006年)発行ですが、同じ著者の『わかりやすく、くわしい やきもの入門』という本が平成30年(2018年)に発行されています。この2冊の内容はほぼ同じものです。判型は本書の方が若干小さくコンパクトですが、見やすさは遜色ないと感じました。どちらを選んでも問題ないと思います。

筆者からは、「はじめに」の中で、古陶磁の鑑賞、和食器を選ぶときに心に留めておくとよいアドバイスが紹介されています。

  1. 最初の印象を大切に

  2. 古陶磁の名品を数多く見る

  3. やきものの知識を身につける

本書には、古陶磁の優品の写真が70点掲載されているので、解説と合わせて古陶磁を学ぶ上で、役に立つと思われます。

やきものの基本を知る

本書の構成は、

第1章 やきものができるまで

第2章 やきものの種類・技法と見方

第3章 全国窯場別 やきものの見方・楽しみ方

第4章 やきものの歴史

となっています。

第1章では、やきものができるまでのプロセス、土、成形法、装飾技法、焼成、器の形、器の部分名称などの基本的な知見が解説されています。豊富な写真と図版が付いていて、とても分かりやすいです。器の形、器の部分名称も、図版で一つ一つ丁寧に説明されています。

第2章は、土の性質、絵付けや釉薬、装飾技法、焼成方法などさまざまな種類と技法の解説です。各地で見られる独特な表情や魅力がどのようにして生まれているのか、鑑賞のポイントも解説されています。

本書の魅力とは?

本書の一番の魅力は何でしょうか?

私が一番いいなと思ったのは、「第3章 全国窯場別 やきものの見方・楽しみ方」です。やきもの好きなら、一度は訪ねてみたい全国の窯場68を選んで、歴史や特徴と見どころ、窯里が解説されています。47都道府県に68もの窯場があるなんて、日本はいわばやきもの天国と言っても過言ではないですよね!

最初に「全国窯場地図」という日本全図があり、窯場の場所を示すマーキングと小さなやきものの写真もついていて、眺めているだけでもワクワクしてしまいます。九州から北海道まで、エリアごとに窯場の説明と写真があり、具体的なイメージを掴むことができるよう編集されています。こうして直感的に一覧できると楽しく探せます。今回の有田陶器市に行く前にも、有田焼・伊万里焼の解説を予習して準備しました。(→詳しくは「有田&波佐見の陶器市に行ってきました』をご覧ください)

本書の上手な活用方法とは?

本書は著者によれば、初心者向けの本ということですが、私は陶磁を楽しむ上で、手放せないガイドブックだと思いました。掲載されているたくさんの情報が、読むだけで頭に入るわけではありませんよね。ネットでどんな情報も見つけられる時代ですが、こんなに系統立って情報が得られるものではありません。そういう意味ではコンパクトに必要な情報が一通り編集されている本書は、陶磁のガイドブックとしてぴったりです。「〇〇焼ってどこの地方のものだろう?」とか、「このうつわはどういう技法でつくられているんだろう?」とか、「このうつわの形って何という名前なんだろう?」とか、一通りの疑問に応えてくれるでしょう。

第4章にはやきものの歴史がまとめられています。割かれているページ数が限られているので、知りたい時代のやきものについての情報は正直いって物足りないです。必要があれば別の書物を当たる必要があるでしょう。それでも歴史の流れを大きく把握することはできそうです。

巻末には「名工・人間国宝ガイド」、「やきもの用語集」、「やきもの美術館ガイド」が付いています。発行時期がやや古いので、随時、最新情報を確認しながら活用するのがいいでしょう。

タイトルとURLをコピーしました